「落語家はなぜ噺を忘れないのか」
2009年04月18日
今回のタイトルは、ずばり読んだ本の名前です。
インパクトのあるタイトルにつられて本を手に取り、
著者名の「柳家花緑」を見て、迷わず買いました。
花緑師匠といえば、人間国宝の五代目柳家小さん師匠(故人)を祖父に持ち、
戦後最年少の22歳で真打昇進。現在も「六人の会」をはじめとして
精力的な活動を続けている方。そんな方が落語の「コツ」のようなものを
教える本なのか・・・と思って買ったら、話はもっと深いものでした。
「小さんの孫」というプレッシャーと戦いながら新たな挑戦を続ける花緑師匠、だからこその
葛藤や悩み。その中で、どうやって覚えた噺を「自分の噺」にし、そこに
命を吹き込んでいくのかが、とても分かりやすく書かれています。
花緑師匠というと軽快なイメージを持っている方が多いかも知れません。
しかし、根はものすごく真面目で繊細な方。僕も数年前に
チバテレビの「浅草お茶の間寄席」という番組でインタビューをさせてもらいましたが、
どうやったら多くの人に寄席に足を運んでもらえるか、どうやったら
若い人が落語に興味を持ってくれるのか等々・・・。インタビューが終わった後も、
これからの落語について熱く語って頂いたのを今でもよく覚えています。
たぶん、落語をあまり見た事が無い人がこの本を読むと
「落語家はこういう事を考えて高座にあがるんだ」と違った視点で楽しむ事ができ、
落語を見続けている人は「花緑師匠は、こうやって今の形を作ったんだ」あるいは
「小さん師匠はこんな事を伝えていたんだ」という発見があるはずです。
ぜひ、落語を聞きに行く「前」に読んでみて下さいな。