4月30日(土)NACK5「SPO-NOW」の

コラムコーナー「聖’sフォーカス」でお話した内容を載せます。

※一部、放送と違う表現もあります。ご了承下さい。

九州、熊本を震源とする大地震の発生から2週間が経ちました。

今でも九州では、余震と見られる大きな地震が続いています。

被災した皆さんには、心からお見舞い申し上げると共に、

余震が少しでも早く収まる事と、1日でも早い復興をお祈りしたいと思います。

最初の大きな地震があったのが15日の未明、そして後に、

これが本震だったと発表された最大震度7の地震が未明に発生した16日に、

僕はサンデーライオンズの実況のために神戸へ向かいました。

正直、「野球をやっている場合なのか」という思いも強く感じながら

現地へ向かったような気がします。

その時に思い出したのは、2011年3月の東日本大震災。

あの時は、野球界で言えばオープン戦シーズンの真っ只中で、

高校野球ではセンバツの開催を間近に控えていました。

当時は東北はもちろん、関東でも被害が大きく、また原発の影響で

計画停電などの話が出た事で、多くの試合が中止になり、プロ野球の

開幕も3週間以上遅れました。それでも、この状態の中で開幕する事が、

本当に正しいのかと大きな議論にもなりました。

一方、今回の地震では発生直後に福岡と熊本で行われる予定だった

プロ野球の試合が中止になりましたが、プロ野球のリーグ全体で、

中止や延期になる事はありませんでした。

試合が行われる球場への影響が無かった事も関係していますが、

その分、現場の選手達にとっては、気持ちの整理がつかないまま、

試合に臨まなくてはいけなかったはずです。

地震発生から4日後の19日火曜日、この日、僕は

ロッテvsソフトバンクのテレビ実況でQVCマリンフィールドにいました。

その試合前、両チームの選手達が集まり

熊本への支援を呼びかける募金活動が行われました。もちろん、

それまでにも、スポーツ界がそれぞれの場所で支援活動を行ってきましたが、

この日、募金活動の先頭に並んだのは、熊本出身のロッテ・伊東勤監督。

熊本市内の実家は、震度7を観測した「ましき町」から車で30分ほどの距離。

今回の地震で、市内に住む80歳のお母さまも被災。無事だったものの、

家の中に入れない状況となりました。

つとめて、いつものように振舞っていた伊東監督、しかし募金活動の列に並び、

事情を知るファンから「頑張って下さい」と声をかけられると、

真っ赤に腫らした目から涙が流れました。募金活動は

観客の開場時間に合わせて行われたため、この時間は球場の中では

ソフトバンクの選手がバッティング練習中の時間です。それを考慮して、

先に練習を終えたロッテの選手と、ソフトバンクのピッチャー陣を中心に

募金活動が始まったのですが、地元九州のソフトバンクの選手からも、練習を

終えた内川らバッター陣も次々に募金の輪に加わり、予定されていた時間を

大幅に超えて続けられました。人前で涙を見せない伊東監督、地震の直後には

「野球をやっていいのか」と、複雑な胸の内を明かしていましただけに、

この日の募金活動の後には、更に様々な思いが溢れ出しました。

会見でも、「自分があそこにいられない悔しさはある。

本当に大変でしょうけど、頑張ってほしい」と語りながら、

何度も何度も、涙で言葉を詰まらせました。

一方、熊本に本拠地を置くJリーグ・ロアッソ熊本は、Jリーグと協議の上で

5月7日までの中止を決めました。

地震直後から、自ら先頭に立って復興支援を続ける巻誠一郎選手は

「選手達で5月15日からの再開を決めた。

今まで以上の熊本を作っていく。」と涙ながらに語りました。

戦い続ける難しさと、戦えない悔しさ。

立場は違えど、今出来る事をやるという、使命感は共通するものがあります。

そして見守り応援する我々は、より長い視野で被災地への

応援を続けていく必要があります。熊本へ、九州への頑張れの思いを込めて、

そして被災地で、熱き戦いに、みんなが歓声を送れるようになる。そんな日が、

1日でも早く来る事を、願わずには、いられません。

s-2016-0502.jpg