人見知りアナの鉄日記③
2015年10月05日
目の前にぶどうの実がなっている。
そうなんです。塩尻駅の3・4番線にはホームにぶどう棚があるのです。
この駅の中で比較的列車の数が少ないホームに作られたぶどう棚。
昔からその存在は知っていたけど、たわわに実ったぶどうを楽しめる時期に
こんな近くで見たのは初めてかも。
濃い紫と鮮やかな黄緑色の実が揺れている。
みんなで降りて撮影タイム。
松本山雅のユニフォームを着たサポーターも
名古屋のサポーターも降りてきた。
あれっ、いつの間に・・・。
出発する時に気付いたが、ぶどう棚は思ったよりも長かった。
車両の長さにして2~3両分はあった。
普通、こういう時ってメートルで説明するんですかね。
すみません、距離の感覚が全く無いんです。
実に有意義な「休憩」をして、いよいよ松本へラストスパート。
そろそろ本来の目的を見失いそうなところで、新宿から5時間。
14時ちょうどに松本駅へ到着。
まつもと~、まつもと~。
いつものアナウンスが響く。
これが松本に来る、最大の楽しみ。
味わい深い声なんです。機械だけど。
知りたい人は、調べてみてください。
たぶん、すぐ出てきます。
「鉄道音声遺産」があったら、真っ先に推薦します。
このアナウンスを変えたら、抗議します。
さて、この重い荷物をどうにか置きたい。
ホテルのチェックインは15時。
でも、それまで待つのも勿体無いなぁ。
気を利かせてホテルの人が
「よろしいですよ。もうチェックインして頂いて」
な~んて言ってくれないかなぁ。
とりあえず、駅から3分のホテルへ向かう。
フロントに行くと
「チェックインは15時からですが、荷物はお預かりしますよ。」
そうですよね。そうしましょう。
小分けに出来るバッグは持っていなかったので、
ビニール袋に入ったままのお墓参りセットと、お寺向けのお土産を預ける。
ふぅ~、身軽になった。
駅近くの喫茶店で、ココアフロートを注文。
アイスココアの上に、バニラアイス。大好きな組合せ。
落ち着く店の雰囲気。
間違ってもカフェではありません。喫茶店です。
ゆったりココアフロートを味わいながら、サッカーの資料を広げる。
ビジネスマン風に過ごしてみたかったんですが、
上に乗っていたバニラアイスが美味し過ぎて、1分で食べ切ってしまった。
やっぱり、僕にはビジネスマン風の行動は無理だった。
というか、ビジネスマンは「ココアフロート」とか頼まないか。
こういうお店で1時間くらいかけて仕事をするって出来ない。
なんだか「あいつ、嫌な客だなぁ」って思われている気がして。
周りが空いていても、出来ない。
「あいつさえ帰ったら休憩できるのに」って店員さんに思われている気がして。
結局、資料は見たけど滞在時間15分。
でも、ココアフロートはすごく美味しかったです。
次に来たら、また寄ります。
すぐ近くから松本山雅の本拠地「アルウィン」へのシャトルバスに乗る。
まだ試合開始まで4時間近くあるのに、緑色のレプリカユニフォームを来た
松本山雅のサポーターが列を作っている。
毎回、ここに来ると感動する。
世代が幅広い。
親子はもちろん、3世代のサポーターも珍しくない。
幼少期から親戚がこの近くに住んでいたので、松本は馴染み深い街だった。
その松本の街に、こんなパワーが隠れていたのか。
感慨深い。
そして頻繁に出発するシャトルバスは無料。
アルウィンまで30分かかる立地とはいえ、立派だと思う。
窓側の席に座ると、後から乗ってきた年配の男性が
「こちら、よろしいですか。失礼します!!」
と体育会系の見本のような挨拶で横に座った。
あまりの迫力に「は、はい・・・」としか言えなかった自分が悔しい。
気持ちの良い挨拶には、気持ちよく返したい。
30分ほどでアルウィンへ。
今年3度目の松本山雅の実況は、0-1。
猛攻を見せたけど、結局及ばなかった・・・残念。
勝ちたかったな。
でも、今年も楽しく中継出来ました。
ご縁を頂いた事に感謝・・・来年もご縁がありますように。
さぁて、ここからが問題。
帰りのシャトルバスで松本のホテルに戻るまでが、毎回ひと苦労なんです。
松本駅行きのバスは便数が多いけど、乗るまでに毎回1時間半近く待つ。
それだけの長い長い行列が出来る。
前回は、途中で諦めて「塩尻駅行き」の列に移ったら、少し早く帰れたんだっけ。
でも、塩尻から松本に向かう列車が、なかなか来なかった。
でも、せっかちな僕は、早くバスに乗りたい人なんです。
というわけで、今回は最初から「塩尻駅行き」のバス乗り場へ。
松本行きのバスは、今日も長蛇の列。
その横を抜けて、塩尻行きは・・・お~!人が少ないじゃん!
さっそく並ぶ。
目の前に止まっているバスに乗れるかと思ったが、10人ほど前で満員。
「この感じなら、次もすぐ来るだろう」と思いながら、見送る。
・・・・・来ないんだ、次のバスが。
駐車場には次々にバスが入って来るが、どんどんと「松本行き」の乗り場に向かう。
それはいい。松本行きの方が圧倒的に人は多いのだから。
他に、近くの駐車場までのシャトルバスもいる。
でも、10分経っても、20分経っても、塩尻行きの乗り場にバスは回って来ない。
1台くらい・・・1台くらい回しても良いんじゃない?
さらに30分経過。さすがに、みんなイライラしてきた。
しびれを切らせた人が、スタッフに尋ねている。
様子を見る限り「まだ分かりませんねぇ」みたいな会話になっているようだ。
そこにスタッフの上司っぽい人がやってきて、何か話し始めた。
すると、次に入ってきたバスが、こちらにやってきた。
はっ?!
そんなに簡単に・・・?
もう色々考えるのは止めた。イライラしても仕方ない。
これでホテルが近付いたのだ。晩ご飯が近付いたのだ。
ホッとしたらお腹が鳴った。
太ももを蚊に刺されているのに気付いた。急にかゆい。
結局、トータルで1時間待ってようやくシャトルバスが出発。
塩尻駅までは30分の道のりだ。
アルウィンの周りではいつも渋滞が激しい。
でも、バスに乗れたことで、気持ちが落ち着く。
後ろの席のカップルの話し声が聞こえてくる。
「え~?伊勢神宮に行った事無いの?今度行こうよ~。」
あれっ?まだ友達の関係なのかな。
「ねぇねぇ、まだ着かないのかなぁ~。お酒が抜けちゃうよ~」
はいはい、気持ちは分かるけどね~。
ちょっと声を小さくしても、隣りの女の子には聞こえると思うぞ。
「あっ、そうだ。心理テストやろうか?面白いんだよ~。」
心理テストは良いけど、その声の大きさだと、
テストを受けるのがバスの乗客全員になっちゃうぞ・・・。
それにしても、きょうは道が混んでいる。いつまで経っても渋滞を抜けない。
後ろから男性が歩いてきた。運転手に文句を言うのかな。
嫌だなぁ、密室の空間で。
「運転手さん、さっきの道で右に曲がった方が速かったんだよ。」
良かった、とりあえず穏やかな話しぶりだ。
「すみません、会社に言われて決まったルートしか走れないんですよ。」
ふ~ん、そういうものなのか。
まぁ、それぞれのバスが勝手な道を走ったら大変だもんね。
それから20分。おもむろに運転手がマイクを持つ。
「え~、先ほどのお客さん。前に来て頂けますか?」
何?今さら反撃?止めてよ~、バスの中でケンカとか・・・。
男性がやってくる。まだ山雅のユニフォームを着ている。
「すみません、会社の許可が取れたので、駅まで案内してもらって良いですか?」
へっ?!案内??
ていうか、最前列で聞いていたけど、そんな無線の会話、全く聞こえなかったぞ?!
確かに急に「塩尻行き」になったのかもしれないけど、それでも地元の道でしょ?
「どうぞ、そのガイドの席が引き出せますんで。」
観光バスのガイドさんが座る折りたたみ式の椅子に、なぜかサポーターが座る。
「次の交差点を右・・・」男性がテキパキと指示を始める。
渋滞を抜けて、少し細い道を走り始めた。
観光バスが通るサイズにしては不安だけど、とにかく道が空いている。
スイスイ行く。
「ほぉ~、そうなんですか~。」
いやいや、運転手さん、感心している場合じゃないって。
「このまま、塩尻に着くまで、そこにいてもらって良いですか?」
めっちゃ明るい声。
ツッコミどころが満載だけど、早く着いて欲しい気持ちに勝るものは無い。
サポーターさん、すみません。このバスの事を任せます。
「え~、何コレ?!いつ着くの~!!」
後ろのカップルは黙っていなさい。
それから30分ほど、一度も渋滞にはまる事無く、塩尻駅に到着。
サポーターさん、本当にお疲れさまでした!!
到着間際に運転手さんが一言。
「それで、いつもは塩尻駅のどの辺にバス止めています?」
マジか?!
結局、試合が終わってから2時間が経過。ようやく塩尻駅に到着。
松本行きの普通列車が、すぐにあった。
ホームに降りるが、出発する気配が無い。
「先に発車する特急が遅れているので、この列車も出発が遅れます。」
今度は列車か。
良いって。
もう驚かないって。
松本に着いてくれれば、充分だって。
松本に着いたら、夜の10時半になっていた。