また一冊、筑紫哲也さんの本を読みました。

s-2010_0125wakakiyuujinntachi.jpg

 

この本は、2003年から2008年にかけて、筑紫さんが早稲田大学と立命館大学で

主に大学院生に向けた講座を持っていた時の『講義録』をまとめたものです。

 

この中での筑紫さんは、他の著書よりはっきりした意見、

ましてやテレビより強いトーンでメッセージを送っています。

『警鐘』と言い換えても良いかもしれません。

 

この中でも印象に残るのは『多事争論』に通じる、自らの考え持つ事の大切さ。

そして現代に溢れる情報に流されるな、という事です。

 

『いつも言われている事が正しいとは限らない』

 

これはジャーナリストという職業上とても大切な視点であると同時に、

情報氾濫社会の今、全ての人が認識するべき事なのでしょうね。

 

しかも、執筆という形ではなく『話したこと』をまとめている事で、

より訴えかける力の強さが感じられます。

『NEWS23』の筑紫さんしか知らないという方がこの本を読んだら、

少し印象が変わるかもしれません。

 

筑紫さんはどんな人に対しても同じ目線で接していた事が、様々な本から伺えます。

一国の総理大臣から子供まで。

その筑紫さんだからこそ、全く接点が無いように見える事柄を結び付けて、

世の中に潜む問題を浮かび上がらせる事が出来る。

日本・世界の歴史、政治・経済・教育、文化・・・これらはお互いに結び付いている。

過去を知る事、それを伝える事の必要性もこの講義の大きなテーマのように感じました。

 

中でも『情報・知識・知恵(判断力)の3つを「知の三角形」と名付け、

『その真ん中に蓄積したものをどうやって体系化していくか。

そして具体的な問題を抽象化する事が「学ぶこと」。

でも、その全ては好奇心が無ければ始まらない』という内容には、

僕の中の漠然としたものが晴れたような気がしました。まさにジャーナリストの目指すべき姿。

 

そして、若者に対する期待も各所に感じる事が出来ます。

叱咤激励という意味だけでは無く、

自らの世代の残してきた事に対する『自戒』のようなものも感じられます。

 

この本の最後には、筑紫さんが高校生の頃に書いた文章が掲載されています。

 

とても、高校生が書いたとは思えない。

高い志と、自分を含めた周りの人を客観的に捉えられる視点。

自分が高校生の時と比べると、あまりの違いに悲しくなります(笑)

 

でも、学ぶ事に『今からでは遅い』という事は無いんですよね。

このような本を読む事は、思い立ってすぐ出来る『学び』。

筑紫さんのメッセージは、これからも活字という形で多くの人に伝えられて行くんだと思います。