志の輔らくごinPARCO 2010
2010年01月18日
1月の恒例となった、立川志の輔さんの渋谷PARCO一ヶ月公演。
僕も2年ぶりに行って参りました。
志の輔さんは、僕にとって「落語との出会い」のきっかけとなった方です。
といっても、お目にかかった事はありません。僕の一方的な思い入れのみ(笑)。
中学の頃に文化放送でやっていた「志の輔ラジオ気分がいい」という番組を
僕が大好きで聞いていたのが、噺家さんを知ったきっかけ。でも今考えると、
「気分がいい」は月曜〜金曜の朝9時〜11時までやっていた番組なんです。
なぜ僕が聞けたんだ(笑)まあ、そんな事は置いておいて・・・。
いきなりこんな事を言うのも何ですが、このPARCOの会のチケットは6000円。
独演会のチケットとしては、やや高めです。
言い換えれば、人気のある噺家さんのチケットだからこそ設定出来る金額。
でも今日の僕は、開演5分にして『このチケットは安すぎる』と思いました。
“今回も”安すぎると思いました。年々プラチナチケット化していくのも仕方無いなぁ。
というわけで、ここからは中身の話をするので、もし
「これからPARCO公演に行くよ」という方は、見ないで下さい(笑)
ご自身で行ってきた後に、僕の時の内容と見比べて下さいね。
まずは、『通常国会初日という大変お忙しい中をお越し下さいまして・・・』と、
恒例の時事ネタでツカミ。
お正月に富山に帰った時の話から、その時に道の途中で見つけた建設途中の高速道路、
そして事業仕分けの話に展開すると、まさにその渦中の人を題材にした
新作「身代わりポン太」。
国からの助成金をもらって、タヌキの巨大な展望台を作ろうとした村のお話。
学生時代の同級生だった村長さんと、展望台を建設する会社の社長さん。
そこへ、もう一人の同級生である県議会議員がやってきて
「国からの金が凍結された」と通告します。しかし、第一次の資金を使って
展望台は下半分が既に完成。しかも、「タヌキをかたどった展望台」だから下半身だけ(笑)
完成させる金も壊す金も無い、と困り果てたところに、それを聞いていたおばあさんが話しかけます。
「昔、この村にたぬきの神話があってなぁ・・・人にいたずらをした罰で、
上半身と下半身をまっ二つにされたタヌキがおった。
上半身を探していたタヌキを不憫に思って、村人がタヌキの上半身を見つけてあげると
タヌキがお礼に表れて、人の身代わりになってくれるようになったそうな。」
初めて聞いた話に周りが驚いていたが、実はこの話、おばあさんが思いついた全くの作り話(笑)
つまり、架空の神話をでっちあげて「下半身だけのタヌキ」を名物にしてしまおう、と
話が展開していくのです。奇想天外で、なおかつ現代を風刺した「志の輔らくご」ならではの作品。
しかも、中入りのロビーには、ご丁寧に「ポン太せんべい」がお土産で売られていました。
会場全体が演目とコラボしてしまうのも「志の輔らくご」の楽しみの一つです。
続いては、志の輔師匠の新作の中でもお馴染みの作品「踊るファックス」
新春セールの薬局で間違って届いた、若い女性からの自殺をほのめかすファックス。
それを見た薬局のおやじが、なんとか説得しようとファックスで返事を書くのですが、
それに対して、なぜか逆ギレの返信ファックスが次々に届く。
それに対抗しているうちに、ファックスを使った大ゲンカに。
いつの間にか、おやじは「自殺でも何でも勝手にしろ!!」
相手は「誰が死ぬもんか!!おまえよりも長く生きてやる!!」と
あべこべになってしまう、というお話。日常にありそうな笑いが詰まった
誰にでも楽しめる作品。だから、志の輔師匠の落語は
「初めて落語を見る人にオススメ」と言われるんです。
しかもPARCO恒例、舞台装置のサプライズが・・・。
この「踊るファックス」が終わった途端に、舞台の壁から
「ここで15分間の休憩」と書かれた巨大なファックスが登場(笑)
PARCOは毎回、こういう大がかりな仕掛けがあるんです。
以前に、志の輔らくごの新作「メルシーひなまつり」をやった時は
巨大な人間ひな壇が舞台に登場した事もありました(笑)
さて、笑いすぎた体を冷まそうとロビーへ出た僕はお土産を購入。
このPARCO公演が初めてDVD化されたんです。
これは自分で見るだけでなく、まだ行った事の無い人に見てもらいたい!!
という意味もあって買いました。なので、僕の知り合いの皆さん、興味があったら貸しますよ(笑)。
さて、休憩後の3席目は、まくらの途中で出た人物の名前に
会場の一部から「おっ、これはひょっとして・・・」とざわめきが起こりました。
古典落語の大作「中村仲蔵」。新しい歌舞伎史に残る実話。人情味たっぷりの芸談です。
人気狂言「忠臣蔵」の上演にあたって、中村仲蔵に回って来たのは五段目の斧定九郎。
ようやく名題になったのに、貧相な山賊の役を回された仲蔵は落胆します。
しかし、女房のお岸に励まされた仲蔵は、蕎麦屋で偶然出会った貧乏侍から
役作りの着想を得るのです。
そして芝居の初日、度肝を抜くような新しい定九郎を見せられた観客たちは、
あまりの見事さにうなるだけ。しかし、それを演技の失敗と勘違いした仲蔵は、
失意のままに自殺も考えながら上方を目指します。
だが途中で芝居帰りの男が仲蔵を絶賛しているのを耳にして…。
聞き所は、とにかく仲蔵の心の動き。世間を驚かせた奇抜な扮装や、
水を滴らせながら駆け入って見得を切るシーンなど、細かな描写と華やかさ。
さらに舞台のシーンでは、仲蔵が花道に登場するシーンに合わせて
真っ暗な会場の左一列に、縦の照明が入るのです。PARCOならではの「花道」の演出。
しかも、長唄まで本物のお師匠を呼ぶという徹底ぶり。
そしてクライマックス、亭主を励ます女房のお岸や、師匠中村伝九郎の言葉に
それまでシーンとしていた会場からは、すすり泣きの声が次々に聞こえました。
まさに究極のサクセスストーリー、笑って笑って、最後に泣いて。
志の輔らくごの醍醐味を満喫しました。
こちらは、DVDを買った特典で行った抽選で頂いたクリアファイル。
過去の「志の輔らくご」の時に作られたオリジナル版です。
これまでは、2年前の公演でもらったクリアファイル(このブログの一番始めに出てきた物)
だったのですが、さすがにボロボロになっていたので、ここで選手交代。
なんだか、また良いことがありそうです。
先日発売された文春ムック「今おもしろい落語家ベスト50」では、
1位の柳家喬太郎さん、3位の柳家小三治さんに挟まれて2位だった志の輔さん。
まだ聴いた事が無いという方、聴かないと損ですよ!!
・・・言いながら、これ以上チケットが取りにくくなったら困るけど。