10月の終わりに、ある本が出版されました。

「突然、妻が倒れたら」

著者はフジテレビ「ニュースJAPAN」のアンカーを務めていた松本方哉さん。

偶然にも僕は、この本を出版早々に書店で見つける事ができ、

読む予定だった他の本を飛ばして、一気に読みました。

 

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松本さんが自らの番組の中で「家族の介護のために番組を休む」という話をした事は

インターネットなどの情報で知っていました。それが、松本さんの奥さまの事だったということも。

 しかし本を読むまで、その病状の深刻さは知りませんでした。

松本さんが休養と復帰を繰り返していた理由も、本を読むとよく分かります。

むしろ、こんな大変な状況の中で、よくぞ番組の仕事を両立されていたと驚くほどです。

 

僕の中で、最初の松本さんの印象というのは「フジテレビの外報部の顔」でした。

湾岸戦争の時、木村太郎さんの横に付き、

連日、報道フロアから最新情報を伝えていた松本さん。

その後の、9・11やイラク戦争の報道でも、その存在感は際だっていました。

 

少し高いトーンから冷静にはっきりと、分析を交えたニュースを発信する姿に

僕は「この人は将来はキャスターになるんだろうなぁ」と勝手に想像していました。

そして2003年、「ニュースJAPAN」のキャスターに。

木村太郎さんが以前に番組でやっていたコラムを受け継ぐかのような

松本さんの「ペリスコープ」のコーナーは、本当に楽しみなコーナーの一つでした。

 

そんな松本さんを襲った悲劇。ある日突然に、「仕事」中心から「介護」中心に変わった生活が

克明に綴られています。そして、松本さん自身の葛藤や憤りもそのままに伝わってきます。

 

僕はまだ独身ですが、読んでいるうちに「いつか自分の家族に同じ事が起きたら」という思いを

抱かずにはいられませんでした。自分と家族への精神的・経済的負担、

誰よりも辛い思いをしている当人へのケアの仕方。そして、家族の絆とは・・・。

 

本の中には「ドラマだったら・・・だろう。しかし現実は・・・」という言葉が出てきます。

介護生活は今この瞬間も続いている、という重い現実と共に、

家族を介護しながら仕事をして生き抜いていくことが、どれだけ大変なのか。

今の日本の制度への大きな問題提起にもなっている本です。

 

奥さまの状態が改善され、松本さんが復帰の報告と共に

自らの体験を基に、介護の現場の声を届ける特集が放送される。

そんな日が1日も早く来る事を願わずにはいられません。