最近、僕が一番テレビで見る機会が多い人、それが笑福亭鶴瓶さんです。

「家族に乾杯」「きらきらアフロ」「A−studio」・・・いずれも、

鶴瓶さんだからこそ、の番組。そして、テレビを見ればみるほど、

噺家として舞台に上がる鶴瓶師匠も、また見たくなる・・・というわけで。

 

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行ってきました!!「笑福亭鶴瓶 JAPAN TOUR 2009−2010 『WHITE』」

来年にかけて続くツアーシリーズ、その中で今回は、浅草公会堂での5夜連続公演です。

 

実は、浅草公会堂に入ったのは今回が初めてだったんです。

すぐ近くの浅草演芸ホールは何十回と足を運んでいますし、

浅草公会堂の”前”は何十回と通り過ぎています(笑)

入口の前にずらっと並んでいる、日本の芸能史を飾った方々の手形も

何度も見てきました・・・が、中に入ったのは初めて。

 

驚いたのは、とにかくキレイで広い!!なんたって、

僕のチケットの席は「2階席」なのに、実際には3階(笑)

更に上の「3階席」は、エレベーターで5階に上がるっていうんだから驚きです。

 

でもね、席に座ったら納得しました。なるほど、これは見やすい。

見下ろしているのに傾斜が適度で、舞台との距離を感じない。

おまけに椅子が大きめに作られているので、実にゆっくり座れます。

今回は1人で来ていたので、開場と同時に自分の席に行き

周りをキョロキョロと見回していると、なんと2列前に

TOKYO FMでお世話になっているミキサーさんを発見!!

普段からスポーツや舞台、イベントなど本当に活動範囲の広い方で

一緒に野球やサッカーを見に行った事も何度もあったんですが、

まさか、こんなところで近い席になるとは!?これも鶴瓶マジック、と確信(笑)

 

 

では、そろそろ中身の話を・・・。

 

この5日間の公演には日替わりゲストが登場します。

鶴瓶さんが信頼を置き、愛する人たち・・・。

月曜日が立川志の輔さん、火曜日が春風亭昇太さん、

木曜日は立川談春さん、金曜日は桂三枝さん。

ありがたい事に、この4人の方の高座は拝見した事があります。

残る1人は、まだ見た事が無い・・・だから、この水曜日に来ようと決めました。

この夜のゲストは、桂南光さんです。

 

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東京の方には馴染みが薄いのかもしれませんが、関西では

テレビの司会にも引っ張りだこの方。以前は「桂べかこ」さんとして

「生活笑百科」にも出ていたので、分かる方もいるかもしれませんね。

 

上方落語に詳しい方に話を聞くと、多くの人が言うんです。

「南光さんの落語は見た方が良い」だから、僕も大阪に行った時に見たい、と

思っていたところに、このタイミング。ラッキーでした。

 

そんな会は夕方6時に開演。ブザーが鳴ると幕が・・・上がらずに

袖口から普段着、と思われるラフな格好の鶴瓶さんが登場。

 

『その日の昼に、腰が痛くて整体に行ったんだけど、全然良くならなくて

でも、先生が自信満々にやってくれるから「効いてない」と正直に言えず・・・(笑)』という

鶴瓶さんらしいフリートークからスタート。まさに、これぞ鶴瓶さんのスタイル。

 

そして南光さんの話に。

 

そもそも、鶴瓶さんの師匠・松鶴師匠と、南光さんの大師匠・人間国宝の桂米朝師匠は

大の親友でもあり、共に上方落語を支えた戦友。ただ、桂南光さんは元々は

桂枝雀師匠のお弟子さんでした。しかし、枝雀師匠がこの世を去り、米朝師匠の元に。

 

そして、時が流れる中で鶴瓶さんは自らの師匠の十八番だった「らくだ」という話を

出来ずにいました。そこへ、「らくだをやってみなはれ」と進めたのが、同い年の南光さん。

共に落語に止まらず、テレビでも活躍しながら、良き相談相手でもあったんですね。

ちなみに会場では、映像を交えて、それまでの物語が紹介されました。

しかもナレーションは、フジテレビの福井謙二アナと島田彩夏アナ・・・豪華です。

 

南光さんの披露した噺は「素人浄瑠璃」。すこし、ご紹介すると・・・、

 

世話になっている旦那の”下手な義太夫”の会から何とか逃げようとする

お店の使用人、家族、近所の人々・・・最初は嘘の理由を作って逃げようとするが、

旦那に気付かれ「ならば、ここから出ていってもらって結構!!」と

へそを曲げられた途端、慌てた一同が覚悟を決めて(笑)集結。

まるで大砲を避けるがごとくに、下手な義太夫という敵(?)に立ち向かう様子が

何とも笑える話。

 

でも、この話。最後にもう一つの展開が付いた「寝床」という名前で

よく耳にした事がありました。しかも、南光さんの独特のダミ声から生まれる

個性的な人物像が、より話を盛り上げる・・・うん、確かに南光さんはイイ!!

そして、話を聞き終わった時に考えました。

 

今まで聞いた「寝床」で一番面白かったのは、誰のだろう・・・導かれた答えに

びっくりしました。前にこのブログでも書きましたが、浅草で見つけて買った

落語のDVDの「寝床」で腹がよじれるほど笑った記憶。

その声の主は、南光さんの師匠であった桂枝雀さんでした。

なるほど・・・南光さんにとって、そういう意味が込められた高座だったんですね。

 

 

そして、中入りを挟んで鶴瓶師匠の出番。

座るなり、カタン!!と拍子木を響かせると、枕も無しに話に入った。

 

「おい!らくだ!!」

 

来た!!

きっと会場のみんなが思ったはず。

やはり、鶴瓶さんが選んだのは「らくだ」でした。

いや、むしろ、その為にこの日の会があった、という方が正解かも。

 

「らくだ」は時間が長く、なかなか演じられない噺。

 

体が大きくて動作がのろいから「らくだ」というあだ名の男の家へ兄貴分が訪ねてきたが

当人は前の晩にフグの毒に当たって死んでいた。

そこへ長屋出入りの屑屋が通りかかっちゃう。

こわ〜い兄貴に脅されて、屑屋は長屋を回り、あの手この手で・・・しまいには

らくだの死体まで持って行って、葬式費用に香典、通夜の酒と料理を調達。

 

しかし、集めた酒を飲むうちに屑屋が豹変!!威勢が良くなって立場が逆転することに。

やがて酔っぱらった2人は、らくだを火屋(ひや・今の火葬場)へ樽に入れて運ぶが

途中で中身を落としてしまう。しかも、慌てて戻った二人は、酔いつぶれて寝ていた

生きている他人を入れて火屋へ。やがて目を覚ました酔っぱらいは、

火にかけられて大慌て!!「ここはどこだ」「火屋だ」

「ああ、冷酒(ひや)でもいいから、もう一杯」というお話。

 

ところが、この師匠の十八番に、鶴瓶さんは「続き」を作りました。

実は、途中で落とされた「らくだ」が生きていた・・・そして、長屋へ帰ると

2人がまだまだ呑んでいた・・・「えっ?らくだの幽霊!?」

「なんてこと、しやがるんだ!!おまえ達を、火屋へ持って行ってやる!!」

「ああ、冷酒でもいいから、もう一杯」

 

そう、同じ言葉での「二度オチ」僕も初めて聞きました。

う〜ん・・・イイですね。この発想も鶴瓶さんらしい。

終わったあとに鶴瓶さんが「師匠が聞いたら、怒らはるやろなあ」と

照れくさそうに話していたのが、感動を増幅させました。

 

鶴瓶さんの噺には、笑いだけではない「人」がいる、「感動」がある。

そして「物語」がある。3時間近くの会で、鶴瓶さんも南光さんも、1つずつの噺。

一夜限りの夢、でございました。少しは、この感動伝わったかな・・・。

(長くなっちゃってすみません。最後まで読んでくれた方、ありがとうございます。)