「ことば」のちから
2009年09月07日
僕のホームページのタイトルにもなっている「かたり職人」。
その「かたり」の神髄を、この週末、目の当たりにしてきました。
元NHKのフリーアナウンサーの皆さんが設立した「ことばの杜」
その2周年を記念した会「朗読で綴る太宰治の世界」です。
今年、生誕100年を迎えた太宰治の作品を、
山根基世さん、広瀬修子さん、
そして「その時歴史が動いた」の名ナレーションが
記憶に新しい松平定知さんなど、
ベテランアナウンサーの皆さんが朗読する舞台。
話のあらすじを、同じく元NHKの宮本隆治さんが紹介し、
チェリストの柏木広樹さんが、それぞれの話からイメージして即興をします。
柏木さんといえば、映画「おくりびと」で主演の本木雅弘さんに
チェロの指導をしたことでも有名。・・・なんとも、豪華な会でした。
この会の感想を、どういう風に表現したら良いんだろう・・・。
どのように記したら、感動が伝わるんだろう・・・とても難しいです。
とても「すごい」という簡単な言葉だけでは表現し切れませんでした。
まず「朗読」という世界の奥深さ。語り部が言葉を発すると、そこには
不思議なほどの情景が浮かぶのです。そして、観る者は話の世界に吸い込まれていく。
山根さんの読む「津軽」では、登場人物の感情が手に取るように伝わり、
松平さんの「人間失格」では、立ち直れないくらいのどん底に落ち、
広瀬さんの「富嶽百景」では、美しい山の頂が映る・・・でも、
「富士には月見草がよく似合う」は、実際に見た光景では無い、という話にビックリ。
月見草は太陽が昇るころには萎んでしまう。よって、その景色はフィクション!?
といった、ユニークな角度からの話が出たのは後半のトークショーでのこと。
最初は、アナウンサーの世界の大先輩である皆さんの朗読を勉強しよう!!と
意気込んで出かけていきましたが、終わってみると
太宰治の作品の面白さが、ただただ印象に残りました。
つまりは・・・それだけ聞く者に「届く」朗読を楽しませてもらったということ。
そして何より驚いたのは、家に帰ってからでした。
映画よりも舞台よりもコンサートよりも、素晴らしい朗読を聞いた余韻が
もっともっと長く続く事に気付かされました。
こんなに穏やかな気持ちで床に就いたのは久しぶり。
自分たちの仕事である「ことば」「かたり」の素晴らしさを
改めて教えて頂きました。次回の公演も、ぜひ行こうと思います。