このタイトル、キーボードで文字を打つだけでも

抵抗があります。

 

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この本はフィクションではありません。ドキュメントです。

実際に死刑の執行に立ち会った拘置所の所長、刑務官、教誨師、法務省幹部、検事、

そして事件の被害者遺族への取材を元に、その瞬間までの細かな様子が描かれています。

 

書店の入口でこの本を見た時、買うのを躊躇って10分以上立ち止まりました。

本を買ってからは、ブログには書かないつもりで読み始めました。

でも、読んでいくうちに「この事は、多くの人が知らなければいけないんじゃないか」と

思うようになりました。

 

裁判員制度が導入されて、誰もが人に死刑判決を言い渡す可能性があります。

だからこそ、それがどういう事なのかを知っておかなくてはいけないのではないか。

 

ニュースで「死刑判決」と耳にした時、どれだけの人の姿が浮かぶでしょうか。

被告、被害者、双方の家族・・・しかし、実際に刑が執行される現場に立ち会った全ての人が

その後も消える事の無い「区切り」に向かってもがき続けている、という事を

どれほどの人が知っているでしょうか。

少なくとも、僕はこの本で知った事が多くありました。

 

これまで、徹底してベールに閉ざされてきた空間。

そして、どこかで人々が目を背けてきた空間。

でも、今は私たちにとって無関係では無いのです。

 

この本の中では、いくつかの事件についての取材が記録されています。

その中で、読んでいて震えが止まらなくなった記述がありました。

福岡・飯塚女児殺害事件。

容疑者が一貫して否認しながら、被害者と容疑者のDNA鑑定の結果を

最大の根拠として、最高裁で死刑が確定した事件。

 

その鑑定が行なわれたわずか半年前、鑑定方法や鑑定メンバーが

ほぼ同じで行なわれたのが、あの「足利事件」での菅家利和さんの鑑定だったのです。

しかし、菅谷さんが釈放される半年前に、福岡の事件の死刑囚に死刑は執行されました。

本当に彼は犯人だったのか、今となっては闇の中なのです。

 

さらに取材の中では、その後の検察の対応に対する大きな疑問も指摘されています。

 

死刑制度の是非、裁判員制度の是非を論じる前に、

まずは「知るべき」ことがあるのではないか。

根本から全てを捉え直す必要性を、強烈に訴えかける本です。