和光市を出た急行は、それまで各駅停車のみだった駅を次々と通過し、
西武線との合流駅・小竹向原に着く。ここで、西武線から有楽町線へ入る電車と接続。

お互いの乗客が慌ただしく行き来し、それぞれの路線に再び分かれてゆく。
副都心線に入ると、猛烈にスピードが上がった・・・と思ったら10秒もしないうちに
急ブレー時がかかって減速する。こんな事が、5回くらい続いた。私が和光市で
急行を待つ間に先発した各駅停車が前を塞いでいるのだろう。

開業当初から混雑による連日の遅れが話題になった事が頭をよぎる。

まだ、万全の状態では無いのだろうか・・・。池袋を出て、いよいよ新しく開業の区間に入るが、
相変わらず、急加速しては急減速の繰り返し、今朝の二日酔いの私なら
具合が悪くなりそうなほどだ。出発時点から、席がほぼ埋まっていた電車は、
新宿三丁目で8割ほどの人がおり、同じくらいの人が乗ってくる。

その一つ前の東新宿で、前を走っていた確定を抜かした事もあり、
渋谷までのラストスパートは、かなりの高速運転だったl。ちょっと怖かったけど。

あっという間に渋谷に到着。ホームに降りると、すぐに新宿方の端に向かう。
実はこのホーム、2面式で4つの線路があるのだが、真ん中の2本は、将来の
東横線直通運転開始まで使用しない。そのため、それまでの期間限定で、
線路の上に架設のホームが造られていて、人の往来が出来る。これによって、
中央の2本の線路の真上に人が立って、正面からやってくる電車を見ることが
出来るのである・・・という事を「タモリ倶楽部」で知った(笑)

s-線路クロス.jpg

さっそく行くと、そこには黒山の人だかり。全員がタモリ倶楽部を見たわけでは
無いだろうが、その中に鉄道マニアらしき人は、ほんの一握り。若い女性や
年配の方など、あらゆる人が携帯のカメラを向けて、待ちかまえているのである。

周りのグループの女性にいたっては「私、何やっているんだろう」と自問自答しながら
「次の電車まで待ってみる」と、鉄っちゃんとしか思えない発言をしている。

 

s-ホーム端の人.jpg

そんな人の輪の中に混じって私もカメラを向ける。

 

s-渋谷ひねり入線.jpg

 

う〜ん、確かに今までに
味わった事の無い迫力。鉄道に興味が無い人も、ぜひ一度行ってみて下さい。

 

約30分は過ごしただろうか・・・。大満足の私は、帰路に就く前に、ふと思いつき
ある場所へ向かった。

 

s-交通博物館正面.jpg

 

日が長くなったおかげで、まだ写真を撮れるだろうと思い、
久しぶりに訪れた神田の「交通博物館」。といっても「旧・交通博物館」である。

連日大盛況となっている、さいたま市の「鉄道博物館」に、その使命を譲った建物は
ひっそりと、だが、そこに立ち続けていた。そこを通る人は誰一人振り返らず、
「閉館しました」「長い間ありがとうございました」といった看板も、そのまま掲げられている。

ただ、多くの子供達が写真を撮った、入り口の実物大車両・
SLと新幹線は姿を消し、レールだけが残されていた。

約半日をかけて、これからを彩る電車達に乗った一方で、消えてゆく列車も多い。
役目を終えた交通博物館の横を、最新型の中央線が走り抜けてゆく。

 

s-交通博物館&中央線.jpg

 

その向こうには秋葉原の街。最先端の文化の移り変わりと共に、
惨劇の現場ともなったこの街も、交通博物館は見つめ続けてきたのだ。

そんな街を走る最近の通勤型車両は、どれも同じような顔をしている。
私が小学校の頃、電車にカメラのフレームを向けた頃と比べると、
なんとも寂しい限りである。

なんとなく、後ろを振り返る。
「これも時代の流れだよ」
交通博物館は、そう言うのだろうか。