いつもNACK5「SPO-NOW」でお送りしている、

僕のコラムコーナー「聖’sフォーカス」

一昨日の放送では、コーナーがいつも以上に目白押しだったので

実際にお話したかったボリュームよりも、内容を削ってお話しました。

そこで、ここに完全版を掲載したいと思います。

※放送は、U-18W杯の決勝戦前(5日(土)のものです。)

「Sei’sフォーカス」です。きょうは熱戦が続く、野球のU−18ワールドカップ、

僕もおととい、昨日と観戦をしてきました。

12の国と地域が参加して、この世代の頂点を決める戦い、

今回は初めてとなる日本での開催です。

例年以上に話題を集めた、今年の夏の甲子園を中心に、

センバツの実績も踏まえ20人の選手で結成された日本代表。

ピッチャーでは、優勝投手・東海大相模の小笠原をはじめ

仙台育英の佐藤世那、秋田商業の成田、県立岐阜商業の高橋純平、

野手では早稲田実業の清宮、関東一高のオコエ、

そして埼玉からは浦和学院の津田も入っています。

そして僕が最初に見たカナダ戦、

会場は、それまでの日本の予選でも使用していた舞洲ベースボールスタジアム。

収容人数が1万人で、バックネット裏にほとんどの観客が収まるほどでした。

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球場に着くなり、入口のすぐ下でアップをする選手達を発見。

こちらがイメージする世界大会の緊張感より、だいぶリラックスした雰囲気でした。

地区大会や甲子園での試合前の表情より笑顔も多く、チームワークを高めながらも、

限りある貴重な時間をを楽しんでいるように感じられました。

そんな中、試合に入ると、一番耳に入ってきたのが、

三塁ベースコーチを勤める、高知高校の島田監督の声でした。

試合中は、夏の甲子園と違って応援団もブラスバンドもいません。

時折、声援と拍手が聞こえるものの、世界大会の緊張感というよりは、

むしろアットホームな雰囲気でした。

その分、日本の攻撃中は常に島田コーチの声が球場に響きます。

「ここから、もう1度気合い入れていくぞ〜!」という掛け声から、

「ストレート系を狙っていけ!」あるいは、ランナーがいる場面で

ピッチャーの投球と同時にランナーに「GO!」という指示まで。

もちろん作戦ですから、すべてをそのまま取るわけには行きませんが、

選手達はその指示にうなずき、

そこからチームが試合の流れを作る場面も数多くありました。

この日のカナダ戦は5ー2で勝利、スコア以上に苦しい戦いでした。

そして昨日、場所は変わって聖地・甲子園球場。

何か始まる前から、独特の緊張感がありました。

会場が甲子園に変わって、観客の数も多くなり、

内野のネット裏はほとんどの席が埋まりました。

舞洲の時のように、思い思いの応援の声が出せる雰囲気では無くなり、

しかも相手はライバル韓国。そんな張り詰めた空気の中で、試合に入りました。

前日に聞こえた島田コーチの声も、観衆のざわめきの前には聞こえなくなる。

ところが、変わって聞こえるようになったのが、チームを率いる

大阪桐蔭・西谷監督の声でした。

前回大会も西谷監督が率いて、この時は惜しくも準優勝。

その反省を生かすと同時に、ドラフトを目前にした球児たちを預かる難しさ。

そんな重みからか、試合前は緊張した表情も多かった西谷監督でしたが、

2回のチャンスの場面、突然大きな声が響き始めました。

「思いきって振っていけ〜、大丈夫や〜」威勢の良い関西弁が響くと、

それが合図になったように打線が繋がり始めます。

バッターがファールを打てば「良いよ〜ファールが一番!」

先発の上野がピンチでタイムをとって靴ひもを結べば、

「上手いよ〜。くつひもを結ぶタイミング。」

思わず観客席から笑い声が上がり、それを見た西谷監督も表情を緩めます。

一気に攻め立てたいところで、相手のピッチャーが交代、流れが止まりそうなところでも、

打席の左バッターに「相手が左ピッチャーになっても代打出さへんから安心せい!!」

そう言ってリラックスをさせておいて、ネクストバッターズサークルの選手には、

小声で細かい指示を出すのです。

しかも、この西谷監督の声が飛ぶのは、ここぞという場面に限ります。

その時点でランナーはいなくても、

西谷監督の声が出るとチャンスが生まれる、そんな流れでした。

ただ、その声が1度も出なかったのは、4番の清宮でした。

打席の清宮の視線を感じると、黙ってうなづくだけ。

しかし、それに安心したように、清宮もヒットで得点に絡みました。

まさに選手の適性を見極めた采配を、垣間見た試合、

これが12ー0という韓国戦での圧勝に繋がりました。

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実力を兼ね備えたメンバーが集まったとはいえ、

短い時間のなかでチームを作り上げる苦労。

そして勝利を重ねる中でも、走塁や守備のミスが目についていたのも事実。

また甲子園での金属バットから木製バットに替わった打線は、

序盤の試合ではなかなか結果を残す事が出来ませんでした。

実力を兼ね備えたメンバーが集まったとはいえ、短い時間のなかでチームを作り上げ、

その分、足を絡めた打線の繋がりから得点に繋げていった、ここまでの戦い。

実際、今回選ばれている野手陣を見ても、俊足・巧打売りにする選手が多く見られます。

そして何より、選手達がそれぞれ、大会に向けたモチベーション作りを

しっかりしている事に驚かされました。

試合前や試合中のリラックスした雰囲気とは裏腹に、

試合後に多くの選手たちが口にしていたのは「悔しさ」です。

打線の中で、膠着状態を打ち破るきっかけを何度も作ったのが、浦和学院の津田。

コンパクトな逆方向のバッティングで、チームに流れを呼び込みました。

試合後にいつも話していたのが、「甲子園に行けなかった悔しさを持って戦っている。

自分達が出来なかった事を果たした仲間たちの中に入ってプレーする自分が、

今何が出来るかを考えたい。」

話を聞いていて、本当に彼らは10代なのかと、何度も驚かされました。

試合が始まれば、バットとボールが触れる瞬間の音、

そしてベンチからの選手達の声もよく聞こえます。

おかげで、夏の甲子園よりも選手の息遣いが近くに感じられました。

重なって見えたのは、映画で見た、メジャーリーグの地方球場です。

球場全体がピッチャーの投げる1球に注目し、

観客は自分達のチームを応援しながらも、相手の選手の良いプレーには

立ち上がって拍手もする。

選手達にとっては、この雰囲気の中でのプレーも、大きな財産になるはずです。

そんな貴重な舞台も、残すは明日の1試合のみ。

初の世界一へ向けた戦いの舞台は、もちろん「甲子園」です。

選手達にとっての、本当の意味での、この夏の集大成。

若き侍ジャパンは、どんな戦いを見せてくれるのでしょうか。

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(9/5(土)NACK5「SPO-NOW」にて放送)