中島清成「無名記者の挽歌」
2010年07月05日
数ヶ月前、本の帯にあった言葉に惹かれて買った本がある。
帯に書かれていたのは『筑紫哲也さんが生前最後に読んだ原稿』
先日のブログに書いた『我、拗ね者として生涯を閉ず』を読み終えるのと同時に
本棚から引っ張り出して読み始めた。
朝日新聞の政治記者として筑紫さんと共に歩み、
全国紙の政治部キャップとして活躍した筆者。
ゆえに田中角栄氏をはじめとする
名だたる政治家とのエピソードは興味深い。
『夜討ち朝駆け』に始まる自身の歩みの中に、
『政治記者とは』に対する答えの全てが詰まっている。
読んでいるうちに、また報道の現場に戻ってみたくなる衝動に駆られた。
僕の場合は地方局の『サツ回り』をほんの少し経験しただけだけれど。
それでも自分の体験と、マスコミの中枢で政治の歴史を見続けてきた筆者の想いに
(勝手ながら)通ずるものを感じて嬉しくなった。
もう一つの『見どころ』は筆者が尽力した『キャスター筑紫哲也』誕生のドラマ。
といっても『NEWS23』の話ではない。
それ以前。まだ筑紫さんが朝日新聞の外報部デスクだった頃に、
筆者が引っ張り出す形でキャスターに起用したテレビ朝日『こちらデスク』。
それは筑紫さんのキャスターとしての第一歩を記録したものとしてはもちろん、
新聞とテレビのドッキングとしても興味深いエピソードがどんどん出てくる。
いずれの話にしても、物語が生まれた様子が事細かに描写され、
読む者にすっと入ってくる。
ジャーナリズムの世界に興味のある人なら、
読み進めるうちに感じる興奮を共感出来ると思う。
歴史の動く瞬間にあるドラマを知る、という興奮。
もちろん、僕の興奮度合いも相当だった。
だって高校野球の大きな仕事を控えている今の僕が、
眠い目を擦ってでも夜中まで読み進め、
移動の電車の中でも食い入るように読んだのだから。