筑紫哲也「この「くに」の面影」
2010年04月29日
まずは、言い訳からさせて下さい。
このところ、ブログの更新がなかなか出来なくてごめんなさい。
実はこの数日、自分にとってチャレンジと言える仕事の話をいくつか頂きました。
そのチャレンジのために、どのように準備したら良いか。
そして今やっている仕事をしながら、どうやって準備をしたら良いか。
・・・考えていったら、仕事以外の時間のほとんどを準備に費やすようになりました。
ブログを書く時間が、というより書く気持ちの余裕がなかなか持てなくなっていました。
よって、お酒も滅多に飲まなくなりました(笑)たまに飲み会で飲むくらい。
別にお酒が嫌いになった訳ではありません。お酒を飲むと、その日は
家での仕事が出来なくなっちゃうから。
とはいえ、準備をしてもしても「まだ足りない」という不安が襲ってきます。
時々、精神的にキツイなぁと思うこともあります。
そういう時に救ってくれるのが、移動時間の「音楽」と「本」
そんなわけで、本の話です・・・前フリ長すぎ(笑)
筑紫さんの遺した本を、久しぶりに一冊読み終えました。
今まで筑紫さんにまつわる本を何冊か読んできた中で、
この本は筑紫さんがテレビや雑誌を通して続けてきた『多事争論』という考えをまとめた
代表的な本のように思います。
豊富な知識を持ちながら『相手に充分に話をさせる』という点で、
他のニュースキャスターと大きく違った筑紫さん。
この本にも、それが強く表れていて『皆さんはどう考えるだろうか』というように
相手に問い掛けて終わっている文章が多く見られます。
その上で、地球環境や経済など
現状の問題を予言しているかのような発言も多い事に驚きます。
また『NEWS23』が遅い時間の番組であったにも関わらず
『これからを担う皆さんに・・・』といった
若い世代・次の世代に向けたメッセージを発信している事も多い。
最近は使われなくなった日本語を、解説を含めた形で盛り込んでいるのも、
『次の世代に残したい』という思いがあるからでしょう。
(恥ずかしながら、僕も初めて知る言葉やことわざが多くありました。)
それは本のタイトルにも表れています。
筑紫さんは常に若い世代の考えに感心を持ち、
それに対して周りの環境が悪影響を及ぼしていないか
様々な角度から警鐘を鳴らしてきました。
しかも、客観的な言い方ではなく
『自分(あるいは自分達)にも責任がある』という自戒が常にあります。
子供たちのために親の世代がすることは、
決まりを作ることではなくて、お手本になること。
そんなメッセージが強く伝わってきます。
別の視点では、『戦後最大の知識人』とも言われた
政治学者の丸山真男さんと筑紫さんとの関わりが出てきます。
筑紫さんがこれまでテレビや雑誌、大学の講義などで発信したメッセージは、
師と仰いだ丸山さんの影響を強く受けているのだと分かります。
そういった意味では、僕たちのような世代と
『知』の深層を繋ぐパイプ役も、筑紫さんがしていると言えるのでしょうね。
筑紫さんが丸山さんを見たように、筑紫さんのメッセージを
様々な角度から分析する事をもっとしていかなくては、と思いました。
巻頭と巻末に書かれているこの本の編者、藤原帰一さん・吉岡弘行さんの言葉は
筑紫さんそのものを表していて、読んでいるうちに筑紫さんの姿が浮かんでくるようでした。
そういえば、僕がこの4月からイッツコムでやっている「地モトTV おかえり!」では
番組のオープニングで一人喋りをするのですが、その時間は90秒。
時には顔が映り続けたまま、90秒喋り続ける事もあります。
「多事争論」も90秒。そんな事でさえ、筑紫さんと同じなんだと思うと嬉しくなります。
それほど、筑紫さんの言葉は僕に様々な事を教えてくれているのだと、改めて実感しました。