「ダメ人間」
2009年12月01日
僕が好んで読む本のジャンルに、エッセイがある。
自分が興味を持った人物、そして目標とする人物のエッセイを読む事で
その人の成功までの道のりや、物の考え方を少しでも理解できるから。
そして、その人の事をもっと知る事が出来るから。
そして、そういった本の内容は「苦悩・苦労」と「成功」の話がほぼ半々な事が多い。
ところが、今回読んだ本では「苦悩」が95%近くあった。いや、それ以上か・・・。
その本とは、北海道が生んだ伝説的深夜番組「水曜どうでしょう」の
「ミスター」こと鈴井貴之の「ダメ人間」である。
「どうでしょう」を知っている人にとっては、「ダメ人間」というタイトルはピンと来るタイトルだ。
番組の人気企画「サイコロの旅」。
振ったサイコロの目によって目的地を決めて、その都度移動。
行った先でサイコロを振り、ゴールの札幌が出るまで旅を続ける企画の中で
ミスターの振るサイコロは、時として奇跡的なくらいに最悪な目を出してきた。
札幌と正反対の方向に行く目、出演者・スタッフの体力を奪う「深夜バス」に乗る目。
その時、旅の相方でありミスターが社長を務める事務所のタレントでもある大泉洋は
「この、ダメ人間!!」という言葉をミスターに浴びせる。
でも、この本のタイトルは、その運の悪さの話ではない。
ミスター本人の過去を指した言葉である。
放送作家、タレント、事務所の社長、そして映画監督と
華々しく見えるミスターの原点が、挫折よりも深い、
文字通りの「ダメダメ」な時代だった事を赤裸々に書いている。
読んでいると、テレビで見るミスターの人物像と結びつかない気もする。
でも、よく思い返すと結びつく気もする。それは「人間味がある」という意味でもある。
何か、今のミスター自身が自分の「振り返りたくない過去」と一生懸命に向き合いながら
言葉を紡ぎ出しているように感じられて、とても読み応えがある。
そして、ミスターの人生の節目に登場する人物「自己嫌悪」
その「自己嫌悪」とミスター自身の会話、葛藤が文章の中に自然に登場する。
つまり、この本はエッセイであり私小説でもある。
人間の心の奥深くにある「弱い自分」を、ここまで出して書いた本は珍しい。
だからこそ、読み終わった後に不思議な元気をもらえる事が出来る。
僕の「ダメダメ」な部分も、こうやって正直に書けたら・・・とも思う。