気が付けば、フリーアナウンサーとして野球中継に関わらせてもらってから

5年以上が経ちました。野球中継の一番の醍醐味は、次の瞬間に何が起こるかを

みんなが同時に感じられること。そして、その瞬間を一番早く伝えられることです。

 

振り返ってみると、僕が球場で見てきた試合の中にも

「今にして思うと・・・」という貴重な場面がたくさんありました。

劇的な幕切れとなった試合、ある選手の成し遂げた大記録を目撃した試合、

花道を飾った試合・・・。

 

そして、解説者の皆さんは

自身の選手時代の体験を含め、より多くの歴史を目撃しています。

その中で、一番多く登場する人物が、江川卓さんです。

 

こんな本を見つけました。

 

 

 

s-egawa-sakushin.jpg

 

タイトルは「真実の一球」

ジャイアンツの元エース、そして現在はスポーツキャスターである江川卓さん。

その江川さんの高校時代、作新学院時代の投球の「スゴさ」を

関係者の取材によって1冊の本にまとめたものです。

 

僕も巨人時代の江川さんのピッチングは、少しの記憶があります。

でも、高校時代の江川さんは、まさに「怪物」だった、ということが

インタビューの記録から伝わってきます。

 

「高校生でストレートが160キロは出ていた」

「ボールが手元に来て、本当にホップしていた」

 

実際に江川さんと対戦した方々が、30年以上の時を経て

真剣に表現するという事実。にわかには信じがたい話も、

話を読んでいると「本当にそうだったのかもしれない」という気がしてきます。

 

相手チームの対戦前の目標が「完全試合・ノーヒットノーランをやられないこと」というくらい

とても打てそうに無いボールを投げていたという江川さん。しかも、全ての人の表現に

共通するのが「プロに入ってからよりも高校時代、しかも2年の時が一番凄かった」という点。

その頃の江川さんを僕が取材していたら、どんな印象を持ったんだろう。

それより、江川さんの本当の凄さを捉え切れていただろうか・・・。色々と考えてしまいます。

 

しかも、江川さんと実際に対戦し、ヒットやフォアボールで出塁した数少ない証言者。

その中に、僕が取材や放送席でご一緒した方が3人もいらっしゃいました。

今年の夏の高校野球千葉大会で解説をお願いした方も

江川さんからヒットを打っているんです。

 

凄い方とお仕事をさせてもらっているんだな、と改めて感じました。

次に会った時には江川さんの事を聞いてみよう、と

少しミーハーな気持ちにもなりました。でも、僕がそんな事をしたら

「なんだよ〜、他のファンと一緒じゃないか!!」と笑って突っ込まれそう。

 

そして、この本のもう一つの魅力は、江川さんと対戦したり

江川さんのチームメイトになったりと、あらゆる形で「江川卓に影響を受けた人」の

人生を追った物語の数々。そこには、我々が知らなかった感動がたくさんありました。

「1球」が人生を動かすという事が、本当にあると教えてくれました。

野球がもっと好きになる本、ですよ。